養生訓に学ぶ!妊活の基本「食事」「運動」「睡眠」の心得

  • 不妊治療・婦人科

みなさんは「養生訓」をご存知でしょうか?

江戸時代の儒学者「貝原益軒」によって書かれた書物で、平均寿命が30〜40歳くらいだった時代に当時83歳だった益軒が、自身の実体験に基づいて書いたとされる「長生きするための心得書」です。

養生訓の内容は漢方の考えと通じる部分があり、長生きというよりは「日常生活のちょっとした心がけで、気持ちよく・元気に生きられるヒント」が多く書かれています。

今回は、この「養生訓」を参考に、妊活の基本である「食事」「運動」「睡眠」についてお話したいと思います。

養生訓は「予防医学」の先駆け

医療が進歩するにつれ、病院での診療は臓器別に振り分けられ、検査や治療はより高度化しました。優れた医療技術や新薬によって病気が治り、多くの命が救われるようになると、日本の平均寿命は世界トップレベルにまで伸びました。

一方で、高齢化に加え医療費が膨大となった現代は、「生活習慣病」「未病」「予防医学」という言葉が一般的になり、「病気にならない体づくり」「病気を防ぐ生活習慣」が重要視されるようになっています。

不妊治療でも同様のことがいえます。

生殖医療の普及・進歩はめざましく、いまや日本は世界トップクラスの不妊治療大国となりました。

適切な時期に治療を受けることは大切ですが、治療の前にできること、つまり「普段の生活を整えること」をもっと重視すべきです。


養生訓は、タイトルの通り「養生(健康を守るための心がけ)」について書かれた本で、現代の予防医学の先駆けのような存在です。

同時に、偏った食事・仕事のストレス・運動不足・不眠・ホルモンバランスの乱れ……妊娠にとってマイナスとなる生活にさらさている現代女性にとっても、「妊娠しやすい体づくり」のヒントとして十分に活用できる読み物になっています。

健康の基本は「食」にあり

ここからは、養生訓に書かれている貝原益軒の言葉をたどってみましょう。

まず最初は、食に関する言葉です。

「五味をそなへて、少しづゝ食へば病生せず」

五味とは、酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味(かんみ・塩気のこと)をさします。

バラエティに富んだ味覚は、食の楽しみにつながります。

そして、それらを少しずつ、なるべく多くの食材から摂ること。栄養バランスだけでなく味覚のバランスも大切に、ということですね。


さらに、こうも述べています。

「夕食は朝食より滞りやすく消化しがたし。晩食は少きがよし。かろく淡き物をくらふべし」

最近では朝食を抜く人が増え、20代女性の約2割が何も食べないか、お菓子や果物のみで済ませているというデータがあります。

朝は一日のスタートですから、脳や体のエネルギーとなる栄養を届けるためにもバランスの良い食事を心がけましょう。

カロリーの高いものを食べたいときは、日中のうちにエネルギーを消費できるよう昼食で摂るようにして、副交感神経が優位になり栄養を溜めこみやすい夕食は軽めに済ませるのがポイントです。

また、「胃の気とは元気の別名なり」という言葉もあり、これは「胃腸の働きが正常であることが健康を保つ秘訣だ」という意味が込められています。

胃腸が元気でなければ、食べたものを栄養として取り込むことができないからです。

とくに、暑い季節は冷たい物の摂りすぎで胃腸が弱くなりがちです。

暑さで食欲が落ち、代わりに水分を摂りすぎると、胃酸が薄まり消化機能が落ちます。

消化不良を起こすと栄養が十分に吸収されないばかりか、胃の痛み・ムカつきとなってさらなる食欲低下につながります。

このような状態を漢方では「水毒」と呼びますが、過剰な水分摂取は胃腸虚弱だけでなく妊活の大敵となる「冷え」を招き、体にとって良いことはひとつもありません。


もうひとつ、胃腸の健康を脅かすのがストレスです。胃腸は自律神経と密接に関係しているため、悩み事やストレスが増えると胃に負担がかかる・腸の働きが過敏になるなどの症状が出てきます。

食習慣に気をつけるのはもちろん、自分なりのストレス解消法を見つけることも大切です。

 

適度に体を動かして、健やかさを保つ

「心を静にし、身をうごかすをよしとす」

「身体は日々少しづつ労働すべし。久しく安坐すべからず」

心を穏やかに保ちながら、体は常に動かしなさい。座ってばかりいずに、体を動かしなさい、ということです。

交通手段が発達し、家事や仕事は自動化され、長時間労働が問題になっている現代では、よほど意識しなければ日常の中に運動を取り入れることは困難です。

厚生労働省の調査によると、運動習慣のある20代女性はわずか11.6%、30代も14.3%しかいません。

運動は筋肉を鍛え、体力や免疫力をアップさせるだけでなく、メンタルヘルスにも良い影響を与えます。適度な運動がリフレッシュとなり、睡眠の質も良くなることは周知の通りです。

「運動」といっても、わざわざスポーツジムに通う必要はありません。

一番手軽な運動は、歩くこと。ひと駅分歩いてみる、エレベーターではなく階段を使うなどちょっとしたことでいいのです。

スキマ時間に座ったまま・立ったままできる簡単な運動を、日常的に取り入れるのもいいでしょう。スクワットやかかとの上げ下げ運動は、下半身を鍛えて血流を良くする効果があるのでおすすめです。

 

一番の休息法は「睡眠」

「ねぶり多ければ、元気めぐらずして病となる」

人間にとって、一番の休息は「睡眠」です。

睡眠が疲労回復やストレス解消に良いことは誰もが知るところですが、長い時間寝れば良いというわけでもありません。

養生訓でも「寝すぎるとかえって元気がなくなる」といっています。

では、睡眠において大切なことはなんでしょうか?

それは、「睡眠のリズムを整えること」、そして「睡眠の質を改善すること」です。

人の体には体内時計(サーカディアン・リズム)があり、このリズムは光の明暗に影響を受けます。体内時計は睡眠・細胞の再生・ホルモン分泌・血圧など、生命を維持する機能をコントロールしているため、リズムが乱れると心身の不調として表れます。

体内時計を適切な状態に保つには、お日さまのリズムで寝起きすること。

人間の体は太古の昔から「暗くなったら眠り、明るくなったら目覚める」ようにできていますが、労働時間が長くなり、寝る直前までスマホやパソコンの光を受ける現代では体内時計が狂いがちです。

睡眠不足は体調や肌のコンディションにも影響しますが、妊娠適齢期の女性にとってはさらに深刻な影響があります。それは「冷え」です。

睡眠不足は、妊活にとって大敵である「冷え」の原因となります。

寝過ぎは良くないといっても、6時間未満の睡眠では一日の疲れは十分にとれず、血の巡りも悪くなり、体は冷えます。

まだ日が昇っていない薄暗い時間帯に起きるのも冷えの原因になるので、できればお日さまの光を感じる時間帯に自然と目覚めるのが理想です。

また、睡眠の質を良くするためには心をリラックスさせること。

お風呂にゆっくりと浸かり、寝る前に軽くストレッチをして体の緊張をほぐします。

寝る直前の飲食は避け、遅くとも就寝の3時間前には済ませるようにしましょう。


漢方には「陰陽論」というものがあり、陰と陽のバランスによって心身の健康が保たれると考えます。昼間の活動性は「陽」・夜間の静寂は「陰」であり、その陰陽が切り替わるのが深夜0〜2時頃です。

陰の時間帯には穏やかな眠りで心身を休ませ、明日へのエネルギーを蓄えましょう。

できれば23時までにはベッドに入り、寝る1時間前はブルーライトを発するスマホやパソコンの使用を控えてください。

【まとめ】

300年以上も前に書かれた「養生訓」が現代でも十分活用できることに感心するとともに、妊活をするうえで非常に役立つ部分が多いことにも驚きます。

普段の生活を大切にし、心身を健やかな状態に保つことが病気や不妊症といったトラブルを防ぐのに有効な方法であることは間違いありません。

いつの時代も「食事」「運動」「睡眠」が一番手軽で確実な養生法だということですね。

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冬に早寝早起きをしてはいけません。〜女性の心と体を整える養生法〜

<出典・参照元>

「養生訓」に学ぶ!病気にならない生き方 元気で人生を楽しむために大切なこと(下方浩史 著 素朴社)

平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要(厚生労働省)

東洋医学のしくみと治療法が分かる本(丁宗鐵 著 ナツメ社)