パリに10年暮らされているさやかさん。
フランスで不妊治療、妊娠・出産、育児をされているので、実際に体験された方からのお話をうかがえるのは、非常に興味深かったです。
なにより、フロランスさんからフランス人の医療者の立場からのお話と、実際に医療を受ける側の立場の方から見たお話を伺うことで、いろんな意味で理解が深まりました。
特に、日本との違いを実感されているので、その点が非常に面白かったです。
さやかさんのブログ
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《外国人でも優遇される保険制度》
日本人でもセキュリテソシアル(健康保険)を持っていれば、健康保険が使えるます。
原則として、労働者は会社に属することでその権利を得ます。
外国からの留学生でもアルバイト(週20時間位まで)をしていれば、セキュリテソシアルを企業は出さないといけません。また、仕事をしない学生で28歳以下の場合は学生用の国民健康保険への加入が義務付けられるようです。
保険診療の場合、2~3割の自己負担でいいのは、日本と同じです。
フランスは家庭医(ゼネラリスト:かかりつけ医)を必ずつけないといけないそうです。
かかりつけ医の診察は1回平均25ユーロ。先生によって値段は数ユーロ異なりますが、だいたいこれくらいとのこと。
まず家庭医に診てもらい、必要であればその紹介で専門医(スペシャリスト)の受診をします。
婦人科での治療も同じで、まず家庭医にかかって、婦人科医への紹介状を書いてもらいます。直接予約での診療も可能とのことでした。
フランスの医師は区分がセクター1、2、3と分かれていて、それぞれ診察料の規定が異なります。
セクター1所属の医師(ゼネラリスト)は保険の定める料金で診察。
セクター2所属の医師(専門医)は、自分で診察料を定めてよいので、セクター1よりも高い診察料を設定しています。
セクター3は自由診療の医師。保険が利かないのですべて自費になります。
《フランスでの不妊治療》
フランスでは、不妊治療にかかる費用のほぼすべてが社会保険でカバーされています。
事実婚などが多い現実を背景に結婚していなくても、2年以上同居していれば、保険適応が受けられます。
また女性には「42歳以下」という条件もありますが、年齢制限のない治療もある。
そして人工授精(6回まで)、体外受精(4回まで)など、不妊治療にかかる費用のほとんどが社会保険でカバーされています。
これは外国人でも同じで42歳までなら100%補助されます。
ただ、公的な保険で受診する場合と私立の自由診療とを自由に選ぶことができます。
さやかさんの通っていた私立の婦人科でも、待ち時間は相当長く、1時間以上は普通とのこと。
ただ、公立と違って部屋は清潔できれいで、来ている客層も裕福そうな人が多く、完全予約制のため部屋が混み合って席がないというようなことはなかったそうです。
一方、誰でも来ていい公立は、子沢山のママさんや、おしゃべり大好きなマナーの足りない方も多く私立の診療所とは別世界。
医師の使っている医療器具にも明らかな差があるとのこと。
フランスは貧富の差が日本よりはっきりしているので、そういう意味で、自分が無理なく払える範囲で病院選びをしているように感じたそうです。ただ、そのことに対して、すごいとかひけめとかを感じることはない社会だとのこと。
病院によっても異なりますが、私立の病院で1回95ユーロ(内診、エコー)で排卵チェックを行ってもらっていたそうです。
また、『補足保険(ミチュエル)』という医療費の自己負担分を補助する保険(さやかさんの場合は月100ユーロの保険だったとのこと)に別途加入することで、私立の病院で行った不妊治療費も一部戻ってきたとのことでした。
フランスでも不妊治療の内容を個人がどこまで求めるかで、負担にも差が出るようです。
日本の不妊治療の大きな負担からは考えられないような制度で、話をうかがいながらおどろきました。
やはりフランスでも、不妊治療は大変だそうです。
治療のために急に休む必要があるので、不妊治療をしていることを職場では言わざるをえません。
ただ、さやかさんの当時の上司が不妊治療を昔していたひとだったので、理解はあったし、まわりのサポートもあったとのこと。
そして、
会話の中で、「こどもはまだ?」的な質問をされることは日本と違ってないとのこと。
社会の不妊治療に対する空気は、決して悪くなく、実際に治療をしているひとも多いそうです。
養子やステップファミリーも多く、多様な家族の形が自然に受けられている印象があります。
《補足保険(ミチュエル)》
公的保険でまかなえなかった不妊治療の費用を補ってくれた『補足保険(ミチュエル)ですが、フランスの保険診療の非常に面白い特徴のようです。
公的保険でカバーしきれないものを民間の保険でカバーする制度で、最初、お話を聞いたときには日本の医療保険のようなものかと思ったのですが、それとは全く異なっていまいた。
通常の健康保険と併用して使うように設計されています。
たくさんの種類があり、自分にあったものを保険の専門家に相談して自由に選ぶとのことでした。
ミチュエルとは、相互扶助、共済組合という意味です。
通常、公的保険(基本的には職域で別れる、日本の社保や国保みたいな感じ)だと3割くらいが自己負担になりますが、この3割部分を補足保険が負担してくれます。
公的保険とは別に、補足保険も企業に勤めていると、企業が費用の半分くらいを払ってくれます。
保険の種類によって、金額も負担してくれる範囲も異なりますが、例えばいいミチュエルだとメガネ代とか年間300ユーロくらいまでみてくれたりするとのことでした。
フランスの公的保険の考え方として、国が面倒を見てくれるラインが決めてあって、それ以上を求める場合は自己負担が大きくなります。その部分をカバーするために民間保険(ミチュエル)に入るという意味合いも多いようです。
別途毎月の負担が発生するので、全員が加入しているわけではないですが、メリットが大きいため値段の高い安いの違いはあれ、加入している人も多く、企業側が半分を負担してくれることもあり、2004年のデータだと95%くらいのひとが加入しています。
補足保険については、財務省財務総合政策研究所 のレポートがあったので、詳しく知りたい方は、こちらからどうぞ。
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実際に暮らされている方のための手引のサイトもあります。
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《子育てへの手厚いサポート》
PMI(Protection Maternelle Infantile)といってお母さんの拠り所があるそうです。
助産師さん、保健師さんが常駐していて、医師も定期的に来てくれる。
そして、いろんな説明会が開催されていたり、子育てのアドバイスをくれます。
また、助産師さんが関わることがすごく多く、キャビネ(助産師さんの個人事務所:日本の助産院とは異なり出産の取扱はない)でペリネケアもしてもらったそうです。
さやかさんがお願いした方は、元気のいいおばあちゃんという感じの方で、産後家に来て、ここはこうしたらいいよーってどんどんアドバイスしてくれて、とても助かったとのことでした。
保育園(クレッシュ)は1ヶ月最低1万円くらい~で、所得によって10段階の金額差があります。
そして夜は基本6時半まで見てもらえて、3食、おやつも出る!
それ以降の遅くまで面倒を診てもらう必要gあある場合は、ベビーシッターをお願いして保育園に迎えに行ってもらい、みてもらうことになるそうです。(ベビーシッターには公的な補助金が使える)
いろんな種類の保育園があって先生がいっぱいる大型のところもあれば、1一人の先生が3~4人の子をみてくれるところもあります。
小さいところは、保母さんではなく一般のお母さんが役所で勉強をして認可をえた保育ママさんのような感じで、ヌヌとよばれているんだとか。
こどもの習い事もパリ市がやってて、通えます。
パリ市や各区が運営している公的な習い事も、親の所得によって費用が10段階に別れています。
教育費は無料ですが、給食費も10段階制。
そのため、所得が高い人は、私立に行かせるのと変わらない金額になる場合もあるので私立へ行かせる親も多いとのこと。
貧しい人ほどお得に公的な施設を使えるように、平等にされているのです。
また、こどもが病気になった時は、父、母両方とも病児で休め病欠扱いになるとのこと。
出かけたい時は、まわりがベビーシッターし合うことも多いそうで、お母さん同士でこどもの預かりっこをしたり、近所の中学生の女の子にバイトで10ユーロくらいでみてもらったり、迎えに行ってもらったりすることもあるそうでした。
それとは別に、ベビーシッターもよく使い、補助もあるそうです。
(幼稚園のようす)
社会の雰囲気もあり、子育ては非常にしやすいとのこと。
印象的だったお話があります。
以前、一時帰国した時に、電車にベビーカーで乗ったっら
おじさんんにチッて舌打ちされて、外に出るのが怖くなったことがあったとのこと。フランスではありえないことで、交通機関でエレベーターがない場所も多いですが、ベビーカーを押していたら、誰かが必ず手伝ってくれるそうです。
保育園(3歳まで)は任意ですが、専業主婦が少なく、職場復帰も産後3ヶ月目からされる方がおおいことを考えると大部分のひとが預けているのでしょう。
そして、
幼稚園(エコール・マテルネル 3~6歳)はフランス人の98%が通うそうです。
エコール=学校と名付けられているころからわかるように、教育機関として位置づけられています。
そして、なんとフランスは幼稚園から高校まで学費は無料です。
ちなみに大学の学費も驚くほど安い。
教科書代などを求められることもなく、本当に教育にお金がかからないようになっています。
幼稚園は8時半~16時半ですが、16時半~18時半までソントルロワジール(centre loisirs 学童保育所 ソントル:センター ロワジール:集会所)があり、所得によって異なりますが10円~1000円くらいの負担で預けることができます。
これは、小学校に入ってもも同じような制度があるとのことでした。
幼稚園がおわったあと、そのまま幼稚園が学童保育の場となります。
なので、こどもが移動する必要がありません。
安心して親は仕事ができるというわけです。
かといって、幼稚園の先生に負担がかかるわけではありません。
幼稚園の先生とは別に、アニマター(Animateurs遊ばせるひと専門:学校の時間以外の専門員の資格)というひとがいて、学童保育の時間はこのアニマタの先生たちがこどもをみてくれるのです。
先生は幼稚園の時間が終わると終わり。授業の準備の時間もしっかり確保されています。
そして、先生たちも自分の特色を授業に発揮することができます。
また、バカンスなど長期の休みの間も学童保育が開かれ預けることができます。
とにかく、働く親に負担がいかないようになっていますし、かといって、学校で働く先生にも負担がいかないように、うまく制度がつくられています。
また、クラスには先生とは別に、お世話係の先生がいて、トイレやお昼寝の世話など日常ケアのお手伝いをしてくれます。
先生は授業やその準備に専念できるようになっています。
(学芸会フェットデエコールのようす)
授業参観日や運動会、部活動もない。
卒業式、入学式もない。
PTAは一応あるけど、変なイベント、集まりもないとのこと。
遠足やアトリエなど学校の職員だけでは人手が足りない時には
前もって親のボランティアが募集されるので、行ける親が付き添いなどを手伝い、一緒に子供のお世話をします。かといって無理にということでもありません。
教育において、親に負担を求めることが基本的にない制度になっているのが日本と大きく異なり、非常に印象的でした。
つづく