生理前のイライラを克服して、妊娠しやすい体へ変えるためには?

  • 不妊治療について

生理の1〜2週間前くらいから生じるイライラ、頭痛、眠気、腹痛、精神的に不安定となるなどの症状を月経前症候群(premenstrual syndrome=プレ・メンストラル・シンドローム)といい、PMSと呼ばれています。(以下、PMSと記載していきます)

子どもを産める年齢にある女性にとってはPMS症状は卵巣機能が働いているという一つの証拠にもなります。しかし、妊娠を希望する女性でしかもPMS症状が比較的強いと、もしかすると妊娠に影響するのかもと、心配になることもあるでしょう。

今のところ、PMSがあるから妊娠しにくいという西洋医学的なエビデンスはないようです。
しかし、PMSを改善し心や体の調子を整えることで妊娠しやすい環境を作っていくことは必要といえますし、
漢方的には、ないほうが良いとされています。

ここでは、特にPMSに悩み、さらに妊娠をしたいと願うご夫婦に向けて、PMSの症状や治療、対処法などについてじっくり解説します。

PMSとは?その症状や原因は?

日本産科婦人科学会では、PMSとは「月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するもの」としています。

その症状も多岐にわたり200〜300もの症状があるとされていますが、大きくは精神症状と身体症状に分けられ、次のようになります。

①精神症状:イライラ、情緒不安定、抑うつ気分、自己評価の低下など
②身体症状:乳房が張る感じ、腹部膨満感、むくみ、だるさ、頭痛、腹痛など

生理前の大抵の女性は、程度や感じ方の違いはあっても、いずれかの症状を感じており、そのうち5.4%程度の人が日常生活に支障をきたすほどの重い症状があるといわれています。

では、なぜこのような症状が起こるのでしょうか。

実は、西洋医学において原因は詳しくは解明されていません。
しかし、排卵後から生理まで多く分泌されるプロゲステロンという黄体ホルモンや脳内ホルモン・神経伝達物質の異常、これら以外にも様々な要因がPMS症状に関連していることが分かっています。

PMSの診断は?どんな治療法があるの?

もし、生理前の不快症状が日常生活に支障があるほどのものであれば、一度婦人科を受診してみましょう。

PMSの診断には、米国産婦人科学会の診断基準が適応され、以下のような点がポイントとなります。

  • PMSの発症時期
  • 毎月の生理前に精神・身体症状が少なくとも一つ以上ある
  • 生理が開始して4日以内に症状が改善する

さらに、これらの診断において、抑うつなどの精神症状がより強くみられれば、PMSとは異なる月経前不快気分障害(PMDD)と診断され、また別の治療が必要となります。またPMS以外の病気がないかどうかの確認も重要といえるでしょう。

 

治療法としては、主に4つの方法があり、それぞれについて説明をしていきます。

排卵抑制療法(ピル内服)

PMSの身体症状が全体として軽い場合、低用量経口避妊薬(OC:oralcontraceptives)を服用し、排卵を止めて生理サイクルに伴うホルモンの変化を緩和しPMS症状を和らげます。

ただし、この方法はだいたいの身体症状を和らげることはできますが、すべての人に同じような効果があるとはいえず、とくに精神的な症状への効果は難しいことあるようです。

後述の痛みを緩和する対症療法や漢方薬の服用で効果があまりみられないときに有効ともいえるでしょう。

下腹部痛やむくみなどの症状に対する薬物療法

下腹部痛や腰痛、頭痛などの痛みに対しては痛みを抑える鎮痛剤、さらにむくみなどの体に水分が余分に貯留してしまう症状に対しては、尿量を増やしむくみを軽減するために利尿剤などが用いられます。

精神薬物療法

イライラが強く情緒不安定になったり、不安感が強くなる場合は、その気持ちの緊張を緩めてくれる精神安定剤を服用することもあります。

また孤独感や喪失感などのうつ症状があれば、抑うつ剤を服用して症状を緩和させることもあります。

漢方療法

PMSの治療療法として、実は一番初めに選択される機会が多いとされるのが漢方薬です。

最もよく使わるのは加味逍遙散(カミショウヨウサン)。そして、当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)などの漢方薬が良く用いられています。

ここで注意していただきたいのは、PMSに非常によく使われる加味逍遙散です。若干、からだを冷やす働きがあるので長期間使用する場合は、からだを冷やす成分を取り除いた逍遥丸(ショウヨウガン)のほうがおすすめです。

同じPMS症状であっても、その人の症状や体質によって適切な漢方薬は異なります。その人そのひとに合わせてからだ全体のバランスや体質を整えていきます。
体質が整うことで、PMSなどの生理前の不調は激減することも少なくありません。
自然のリズムと体を調和させる漢方の働きにも、ぜひ目を向けてみてください。

 

日常生活でのPMS対策は何があるの?

ある調査では20代以上の女性の約86%がPMSを経験し、そのうち約89%がPMSに対しストレスを感じているという結果があります。

それほど日常的に女性の身に起きるPMSに対し、治療を受けなくとも、日常生活ではどのような対策をとれば良いのでしょうか。一つずつご紹介します。

自分のPMS症状を知る

普段の生活でまずまずはじめに簡単にできることは、毎朝基礎体温を図ること、そしPMS症状があればそれを記録につけることです。そうすることで生理周期やPMS症状を知ることができます。

記録も、今はスマホのアプリなどの便利な機能もありますし、日記や手帳、カレンダーに記載するのもいいでしょう。毎日のことですので、自分が継続しやしすい方法を選択しましょう。

最低2〜3ヶ月間は基礎体温を測り、記録を残すことで、受診のときにもその記録が役立ちます。

規則正しく、過度なストレスがかからない生活を心がける

普段の日常生活のリズムを見直してみましょう。忙しいのを理由に不規則な生活を送っていませんか?夜間の睡眠も十分とれていますか?

もし少しでも、当てはまることがあれば、散歩やウォーキングなどの適度な有酸素運動を取り入れてみましょう。そうすることで、夜間の睡眠の質も良くなります。

また日中も活動と休息のバランスをうまくとり、とくにPMS症状の出やすい時期は、いつも以上に心身が休息できる時間を確保するようにしましょう。

偏りのない食事に変える

普段の食事の栄養バランスが整っている女性は、PMSの症状に関係があるとされる黄体ホルモンやセロトニンの影響を受けにくいとされています。
逆に言うと、不規則で偏った食事だとPMSが生じやすいともいえます。

もちろん、アルコールやカフェイン、喫煙を控えることも重要です。
さらに、PMSの症状の一つとして甘いものを食べたいという欲求が強くなる人もいて、過度に糖分を摂るのも控えるようにしましょう。

気分転換やリラックス方法を試す

イライラなどの精神症状に対しては、とくに心や体がリラックスすることを積極的に生活に取り入れてみましょう。

とくにヨガや瞑想(メディテーション)は深い呼吸で精神を集中させて、体全体がリラックスした状態を意識的にしかも手軽に作り出すことができます。そうすることでPMS症状による不調を和らげることも可能です。

また、好きな趣味を行う、好きな映画や音楽を聴く、アロマセラピーを試す、ハーブティーを飲むなど、心身が気持ちよいと思えることを無理なく生活に取り入れることも大切といえるでしょう。

PMSを受け入れて、うまく付き合う 

自分のPMS症状が分かり、症状を和らげる方法がわかったら、あとは自分の生活のリズムに合わせ、できることから実践していきます。

また生活にうまく取り入れていくためには、PMSを自分だけの問題にせずに周囲の理解や協力を得ることも必要です。

PMS症状と分かっていても、いらいらして周囲に当たってしまったり、感情を爆発させてしまったりと周囲も対応に戸惑うこともあるでしょう。周囲もPMSについて知らないと理解ができず、関係が悪化してしまうことも。

そのような状況にならないよう、自分の生活に深く影響する夫や家族に対して、自分のPMS症状や現れる時期について事前に伝えることも大事な対処法といえるでしょう。

ほかにも、PMS症状について同じ悩みをもつ人の声が聞けるサイトもあります。
「こころの耳」という厚生労働省が提供している「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」では、こころの病克服体験記として、PMSに悩まされた人のコラムも掲載されているので、一度読むとPMSで悩んでいるのは自分だけではないと再確認できます。

 

【まとめ】

海外では30年以上前からPMSの研究が行われ世間にもPMSは一般的によく知られています。日本で知られるようになったのは数年の間のことで、社会的認知度も高いとはいえません。そのため、PMS症状があっても対処がうまくできず悩んでいる女性も多くいます。

悩んでいる女性の中には、将来妊娠を希望しているのにこのままPMSがあっても妊娠はできるのだろうかという人やカップルもいるでしょう。

今回ご紹介したように、PMS症状に対し様々な対処法や症状緩和のために日常生活でできることもたくさんあります。

最も大切なのは、自分のPMS症状や時期を知り、PMS症状に影響するストレス要因を緩和させていくことです。

このPMSを考えることをきっかけに、普段の生活において自分の心や体に優しい生活を送れているかどうか考えてみませんか。それを実践することが、実は将来的に妊娠しやすい体を作る基本なのかもしれません。

PMSで悩んでいるのなら、少しずつ自分ができることを実践していきましょう。

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<出典・参照元>
公益社団法人 日本産科婦人科学会

一般社団法人 日本女性心身医学会

「産婦人科診療ガイドラインー婦人科外来編2017」
公益社団法人 日本産科婦人科学会
 

「PMS、PMDDの診断と治療ー他科疾患との鑑別ー」昭和学士会誌 第77巻第4号

PMS(月経前症候群)に関する男女の意識調査」小林製薬株式会社

厚生労働省 働く人のメンタルサポート・ポータルサイト「こころの耳」