基礎体温から病気や不妊の原因と対策がわかる。〜不妊・婦人科疾患を治す基礎体温の見方 2〜

  • 不妊治療について

基礎体温の変化は、体の変化のリズムを示しています。その具体的な意味がわかると、基礎体温表の特徴から、いま自分の体がどんな状態にあるのか、妊娠しにくい原因はなんなのか、どういった対策をとるのが効果的なのかを知ることができます。

基礎体温表は不妊に悩む方にとって、悩みを解決するための具体的な手段を解き明かすことのできる、宝物と言ってもいいくらいです。

 

西洋医学的な月経周期の見方

西洋医学的には、低温期は卵胞の育っていく時期であり、脳下垂体から出るFSHによって卵胞が刺激を受けて、だんだんと大きくなっていきます。そして、卵胞からはエストロゲン(E2)というホルモンが出て、そのエストロゲンによって子宮内膜がだんだんと育っていきます。

排卵期になると、卵胞から出ていたエストロゲンがピークになり、そのエストロゲンに反応して脳下垂体からLHというホルモンが出ます。このLHによって卵胞から卵子が飛び出る排卵が起こるのが排卵期です。卵子が飛び出た卵胞は、その出血の刺激を受けて黄体に変化します。この黄体からプロゲステロン(P)というホルモンが出るようになり、体温が上がるのです。

高温期になると、黄体から出るプロゲステロンの働きで、高い体温が続きます。同時にプロゲステロンが子宮内膜をふわふわに変化させて、受精卵が着床できる環境を整え保つのが高温期なのです。黄体は妊娠しなかった場合、最長でも14日ほどで消えて行きます。すると、プロゲステロンがでなくなるので、プロゲステロンの力で支えられていたふわふわの子宮内膜が保てなくなります。子宮内膜が崩れてバラバラに分解されて経血となって流れ出る月経期を迎えます。

この一連の変化が繰り返されるのが月経周期です。

そこには、数多くのホルモンや因子が影響しあって、生命の誕生を支えるシステムができあがっています。

 

東洋医学的な月経周期の見方

基礎体温表は西洋医学的に発展してきましたが、それを易経学説をベースにして漢方的な理解、応用をしたものが周期調節法です。1960年代に中国の最高レベルの中医師(国医大師)である夏桂成教授によって構築され、現代では婦人科の漢方診療の現場において中国では根本的な理論のひとつとして広く使われています。日本でも中医学(中国漢方)を学んだ医師、薬剤師などによって次第に広まり、堀江薬局でも婦人科の漢方相談で最も大切にしている考え方のひとつです。

低温期を陰、高温期を陽とし、その陰陽の変化が基礎体温があらわす体のリズムであると捉えます。

 

月経期は、瀉陰(しゃいん)の時期です。瀉陰とは、経血が外に出ていくこと。体にとって不要になったものを外に排泄するという意味で考えるとわかりやすいでしょう。この時期は、気のめぐりをよくして血流をよくすること、外に出ていく血を補って痛みのない良い生理にすることが大切です。

 

低温期は、陰長(いんちょう)の時期です。漢方でいう陰とは「育てる力」であり、この陰を育てる時期と考えてもらうとわかりやすいでしょう。陰は低温期に大きくなっていく卵胞を育てる力でもあり、赤ちゃんそのものを育てていく力でもあります。この時期は、血とエネルギーをたっぷりと増やすことで育てる力である陰をはぐくんでいくことが大切です。

特に、35歳以降で不妊に悩まれている方は、この「陰」が弱っていることが不妊の大きな原因になっています。年齢を重ねると陰が弱りであり、これは不妊に直結しているのです。ホルモン剤を使っても卵子が育たなかったり、体外受精で採卵してもよい卵子が取れない、あるいは胚盤胞にならない。血液検査でFSHが高かったり、AMHが低かったり、こういった不妊の現場でよく見られる症状の多くは、漢方では陰の不足であると考えます。年令による不妊を解決していくためには、この陰を養い、強くしていくことがなによりも大切です。そして、陰≒血流でもあります。体質の改善を通じて血流たっぷりにすることが、不妊を解決していく背景には、この事実もあるのです。

 

排卵期は、重陰転陽(じゅういんてんよう)の時期です。ホルモンバランスが転換する時期と考えてもらうとわかりやすいでしょう。低温期の間に大きくなっていった陰の力(低温期のホルモン エストロゲン)が、高温期の陽の力(高温期のホルモン プロゲステロン)へと転換します。この転換がスムーズにすすむこと=排卵がスムーズにすすむことです。この時期には、腎といわれる生殖を支える力を補い、血流をよくすることが大切です。また、同時にこの時期には指でびよ〜んと伸びるオリモノが出て、これが夫婦生活のタイミングのサインです。

 

高温期は、陽重(ようちょう)の時期です。体をあたためて受精卵を着床させる力である陽を増やしていく時期という意味です。高温期は、36.7度以上の体温が9日以上続く必要があります。9日未満の場合は黄体機能不全と考えられ、まさに陽不足の状態です。非常に着床する力が弱ってしまっているのです。この時期には、血流をたっぷりにして体をあたためることが大切です。

高温期をとても気にされる方が多いですが、高温期は低温期の結果であることを知ってください。卵胞の中に卵子があり、よい卵胞が育つことがよい卵子につながります。そして同時に、排卵した後の卵胞が高温期の黄体となり、高温期のホルモン プロゲステロンを出します。つまり、高温期に慌てて体をあたためてもほとんど意味がありません。よい低温期を過ごしたからこそ、よい高温期を迎えることができます。高温期がいつも低かったり、不安定であっても、低温期の状態が安定していると妊娠につながりやすいのです。まず改善すべきは低温期です。

 

このように、基礎体温の月経期、低温期、排卵期、高温期を見てきましたが、その時期、その時期で血流が大切な役割を果たしていることもわかります。漢方では子宮は血の海といいますが、血流がたっぷりと流れている状態があってはじめて、すこやかな子宮や卵巣のはたらきが成り立つのです。血流を無視して、健康な婦人科の状態はあり得ません。だからこそ、血流たっぷりになる体質改善をこころがけてほしいのです。

そして、基礎体温の時期、それぞれには意味があります。そのパターンをみることで、不調の原因や対策がわかります。ぜひ、基礎体温の意味を知って、自分の体質改善に役立てていきましょう。

漢方薬剤師 堀江昭佳

 

※東洋医学的な説明では、専門用語を避け一般的にわかりやすい言葉に言い換えています。専門的な時期ごとの養生法は、瀉陰期が行気活血、陰長期が滋陰養血・益腎填精、重陰転陽期が補腎活血促排卵、陽長期が益気養血・温陽助孕となります。